熱海のリゾート不動産投資の動向
熱海のホテル投資の動向 ⑤
以上、最近投資が活発化している宿泊施設を中心に熱海のリゾート不動産市場の動向を概観しましたが、ここで注意したいのは熱海の不動産価格全般が上昇傾向にあるわけでは無いということです。
人口3万7千人足らず、高齢化率は46%を超え超高齢化社会を迎えている熱海市の不動産市場は、基本的に需要を上回る供給が常に存在し一部を除き買い手市場です。この市場の需給構造を補完し、時に大きく変動させる要因がこれまでは首都圏を中心とする外部からのリゾート需要であり、近年では外国資本を含む不動産投資需要です。
これらの需要は、駅周辺や海沿いを中心とする一部の優良物件に集中する一方、それ以外の需要はむしろ減退傾向が強まっており、特に山間部の別荘地では所有者の高齢化や相続等による供給増から需給不均衡が常態化しており、二極化の進行が一層顕著となっています(例外的に別荘地でも中国系富裕層が一度に数件の別荘を購入する様な事例が一部で見られますが、今のところ市場の需給に大きく影響するものではありません)。
また、外部資本の投資行動が市場の動向に大きな影響を与えている熱海のリゾート不動産市場においては、経済環境、特に金融情勢による需給の変動が大きいことも、バブル崩壊やリーマンショックといった過去の経験から明らかあり、近年その傾向が強まっていること、さらに最近では外国人投資家の動向にも注意が必要です。
そのほかには、熱海の地勢的条件、即ち、海岸線から立ち上がる急峻な山地の裾野部分に位置し、温泉街の背後に山が迫る海沿いのリゾート地である熱海は、雄大な海や山の景観・眺望に恵まれる反面、地震や津波、台風や豪雨といった自然災害の影響を受けやすいことにも留意する必要があります。
2020年の東京五輪等を控えバブル期以降最大規模のホテルラッシュが続く熱海では、今後、客室数の大幅な増加が見込まれており、地元のホテル関係者から宿泊市場の供給過剰や人材可確保難の深刻化を懸念する声もあがっています。
この点については、むしろこれを好機と捉え、近年急速に増えている若者や女性観光客に、観光だけでなく「住みたい」「働きたい」と思われる魅力ある街づくりを、引き続き地道に進めていくことが熱海の持続的な発展と安定的な地価形成につながるのではないでしょうか。
(伊豆海山不動産鑑定事務所 不動産鑑定士 柳田 毅)
※以上のレポート①~⑤は2018年8月時点の調査に基づくものです。
追加情報は市況レポート⑥ ⑦、「 熱海のホテル計画2019 」「熱海のホテル投資計画と客室増加予測」をご覧ください。
熱海のヨットハーバーから望む熱海市街の様子
写真中央が熱海駅前の30 階建のタワーマンション「ザ・クレストタワー熱海」。経営破綻したジョイントコーポレーションによるファンドバブル期の開発中断物件のひとつで、ゴールドクレストが事業を承継し2017 年に竣工。駅隣接の商業施設「ラスカ熱海」と共に熱海の新たなランドマークとなっています。