熱海のリゾート不動産投資の動向
熱海のホテル投資の動向 ③
最近の熱海のホテル計画で特徴的な点は、ひとつは、熱海市内で既に営業中の既存の宿泊施設事業者が周辺で新たな施設を開業するケースが見られる様になっていることです。例えば、①の「ATAMI せかいえ」は市内で高級旅館「熱海ふふ」を運営するカトープレジャグループが伊豆山の既存施設付近に新棟を建設、高級ホテルとしてオープンしたものですし、本年7月に開業した渚町のリブマックスリゾートは、同じ渚町で2014 年から営業しているホテルリブマックス熱海の新館的な性格のホテルです。
前者は高級ホテル、後者は比較的リースナブルなホテルですが、両施設に共通するのは、いずれも営業中の既存施設の稼働状況が良好なことが追加投資を後押ししたと考えられることです。なお、水口町の高級旅館「ふふ」については、上記「ATAMI せかいえ」とは別に、現在営業中の施設の向かい(初川の対岸)に前記⑪の新館を建設する計画が判明しています(平成30 年5 月に地元説明会を実施)。
もうひとつの特徴は中国系資本の参入です。前述した東海岸町の商業施設のほかに、中国の会社が企業の保養所を買収しホテルに転用する計画(⑦)や店舗ビルを中国人投資家が買収しゲストハウスに改修する計画(⑧)等があり、その買収価格は売主の購入価格の2~3倍程度と相当の高値での取引が行われた模様です。このほかに、廃業店舗ビルを購入した中国系の事業者が建物を改修し、新たにホテルとして運営している物件(②)もあり、近年熱海においても中国系資本の参入が活発化しています。
さらに、近年のホテル計画の特徴としては、特にリーマンショック後に増加した既存の老朽化した不振ホテルを最低限の改修で低コスト・高稼働で運営する、いわば数で稼ぐタイプの低価格帯のホテルは殆ど見られず、高価格帯の施設が増加(安くても中価格帯以上のホテル)の開業計画が増加していることが挙げられます。
例えば、東海岸町の⑤のホテルは、オーシャンフロントの露天風呂付・全室スイートルームの「5つ星クラス」100室を予定しており(HP)、①の「熱海ふふ」系列のホテルは、夏休み時期に比べ安い9 月の宿泊予約でも、1 室9万円台~30万円台、新館を建設予定の「熱海ふふ」は現在稼働中の既存施設でも1 室10万円台~となっており、これらに比べると低価格帯となるリブマックスリゾート熱海シーフロントが4万円台~、④の来年3月の新館竣工と共にリブランドして開業予定の現熱海後楽園ホテルは旧いタワー館の方でも4万円弱~、森トラストが取得した旧山種寮を改修し営業する予定の高級旅館は同社の開業済みの類似施設(京都)で17万円~となっており、いずれも高価格帯若しくは中価格帯以上となっています。
以上の様に、熱海における宿泊施設に対する投資は、既に30 年近く経過したバブル崩壊以降最も活発化していると言っても過言ではない状況にあり(リーマンショック前のファンドバブル期にはホテル等に対する投資は現在に比べ少なく、リゾートマンションへの建替えが中心、その他は前述の様な商業施設への建替え、宿泊施設への投資は2006 年末のホテルミクラスの開業等、一部既存ホテル・旅館の買収と改修・リブランド案件が散見される程度でした)、この様な最近の宿泊施設に対する投資の増加は熱海のリゾート系不動産市場における取引価格にも影響を与えつつあります。
(熱海のホテル投資の動向④につづく)