熱海のリゾート不動産投資の動向
熱海のホテル投資の動向 ⑦(まとめ)
これまで述べてきました熱海のホテル投資の動向①~⑤及び⑥の追加情報について、ここでいったん整理し、まとめてみたいと思います。以下のリストは投資主体別(日本のホテル運営企業や不動産開発会社、日系ファンド等の主として国内資本と、米国系ファンドや中国系企業等の海外資本)に分け概ね時系列で整理したものですが、下段ではこれを、.投資形態別(既存施設の買収、既存事業者等による追加投資、新規参入企業による用地取得・ホテル建設等)に整理し直し検討しています。なお、下記のリストには、国外資本による投資として、熱海のホテル投資の動向①~⑥に記した中国系資本に加え、中国系以外による直近の投資として、大江戸温泉物語(米国系ベインキャピタル)による「ホテル水葉亭」の買収と「大江戸温泉物語ホテル水葉亭」へのリブランド開業(2017年4月)を参考として掲載しています。なお、下記ホテル名等に付した番号は「熱海のホテル計画2018」や前頁までのホテル等のリストとは一致しませんのでご注意ください。
【投資主体別にみた最近のホテル等への投資】
A.国内資本による投資
① カトープレジャー 「ATAMI せかいえ 新棟」:2017年11月開業
② リブマックス 「リブマックスリゾート熱海シーフロント」:2018年7月新築・開業
②‘リブマックス 「ホテルリブマックス熱海」建替え:2018年10月閉館し解体、新築予定、開業時期未定
③ ワールドリゾートオペレーション(リログループ):保養所をホテル「 熱海風雅」に改修、2018年8月開業
④ 東京ドーム 「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」計画:旧みさき館跡地を再開発、2019年3月開業予定
⑤ ヒューリック 「熱海ふふ」新館建設計画:既存施設の近隣の土地に新築、2019年開業予定
⑥ ライフリビング(レオパレス21子会社)小嵐町ホテル計画:2020年新築・開業予定
⑦ 共立メンテナンス 東海岸町 ホテル「ラビスタ熱海」計画:2022年新築・開業予定
⑧ 森トラスト 旧山種寮ラグジュアリーホテル開発計画:開業時期未定
⑨ プリンスホテル 春日町バス事業所跡地ホテル計画:開業時期未定
B.海外資本による投資
⑩(米国系)大江戸温泉物語ホテル水葉亭:既存ホテルを取得し改修、2017年4月開業
⑪(中国系)来宮駅周辺の旅館:保養所を取得し旅館に改修、2017年8月開業➡転売へ
⑫(中国系)伊豆の海:閉鎖店舗ビルを取得しホテルに改修、2018年5月開業
⑬(中国系)熱海パールスターホテル:大型未入居店舗ビルを取得しホテルに改修2019年5月開業予定
⑭(中国系)熱海駅周辺ゲストハウス計画:店舗ビルを取得しゲストハウスに改修予定、開業時期未定
⑮(中国系)熱海駅周辺ホテル計画:保養所を取得しホテルへ改修を計画するが➡転売へ
⑯(中国系)来宮駅周辺の保養所:自社保養所➡転売へ
【投資形態別に分類したホテル等投資の動向】
上記を投資形態別に分類すると、大まかには(1)既存ホテルの買収・リブランド(⑩)(2)保養所・店舗等のホテルへの用途転換(③⑩⑪⑫⑬⑭⑮)、(3)既存事業者の追加投資(①②②‘④⑤)、(4)新規ホテル事業のための土地等の取得(⑥⑦⑧⑨)に分けられ、(5)取得後に短期で売却に転じているもの(⑪⑮⑯)もあります。
(1)の既存ホテルの買収・リブランドは上記①~⑯の中では⑩(水葉亭)のみで、ここ1、2年は、熱海では買収対象となるホテルが減少したことなどから、(2)の閉鎖保養所や店舗ビルの買収とホテルへの用途転換が主流となっています。(3)は営業中の既存施設の近隣に新館や別館を新たに建設するといった投資形態で、ここでは大浴場等の改修や増床といった投資を超え、既存の建物を取り壊しその跡地に新築したり、既存施設の近隣に新たな土地を確保し全く新しい建物を新築するといった大規模な投資のみをリストアップしています。(4)は熱海への新規参入企業によるホテル建設用地の取得が中心ですが、⑦の「ラビスタ熱海」のように熱海市内で別のホテルを運営中の既存事業者による投資であっても、既存施設が近隣に立地しない場合は、既存施設の「新館」や「別館」的性格は薄れ、新規事業の意味合いが強いと判断されるためここに分類しています。また⑧の森トラストによる旧山種寮の取得は、既存の建物や庭園等の資産を活かしつつも、新規に外資系ラグジュアリーホテルを開発する目的での投資であることから、これも(4)に分類しています。(5)は当初はホテル・旅館への転用や自社保養所としての利用を目的に取得したと見られていたものの、短期で転売に出されている最近の中国系投資家に多いパターンです。現在売却に出されている上記リストの物件⑪⑮⑯は今のところ成約には至っていない模様ですが、中には売り希望価格で買いたいという買主が現れたにもかかわらず売却に応じず、売り希望価格を値上げしてしまう物件も見られる様です。
リーマンショックから今日に至る投資の大きな流れとしては、リーマンショック以降2、3年程前までは既存ホテルの買収と改修・リブランドを行う(1)のような投資が多くみられたものが、ここ1、2年は取得対象となる既存ホテルの減少により、保養所や店舗ビルを取得しホテルに転用する(2)が増加すると共に、既存のホテル事業者には保有施設の改修よりもハードルの高い建替えや土地取得を伴う新館等の建設、大規模な再開発といった多額の資金を要する(3)のような投資に踏み切る動きが見られます。また、(4)のような新規参入企業を中心に新規ホテル事業のための土地等の取得の動きも複数見られ、さらに、(5)のような既に物件を取得した投資家が転売により売却益を狙うといった動きも現在では珍しくなくなっています。
(以上、2018年10月16日更新)
熱海市街地のホテル・マンション群(上の写真)と来年春開業予定の「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」(下の図面と画像)
写真手前の建物が東京ドームグループが運営する熱海後楽園ホテルタワー館。現在、隣接地の旧みさき館跡地において新館100 室と熱海地区最大級の日帰り温浴施設を建設中。 2019 年3 月下旬には既存のタワー館と共にホテル・スパ・フードマーケットから構成される複合型リゾート施設「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」としてリブランド・オープンが予定されている。1965年の熱海進出以来50年以上(タワー館は1996年開業)の歴史を刻む老舗大型ホテルも熱海の観光客増加と競合ホテルの相次ぐ進出計画、2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え、競争力強化のため総事業費110億円に上る大型投資に踏み切っている。


